■特集008 石にまつわる話「 中部編」
 今回、日本の「まんまん中」中部地区の「石」にまつわる場所をご紹介致します。
 まず始めに中部地区は、乗鞍火山帯が存在することにより北アルプス(飛騨山脈)を中心に多くの活火山があります。
その中の奥飛騨温泉郷には露天風呂が159箇所、露天風呂を持つ宿泊施設も150軒と日本一の数を誇っています。また、奥穂高岳や槍ヶ岳など3,000m級の日本有数の峰々が連なり、標高2,800m以上の山が14座もある高い山が日本一多くある場所でもあります。その奥飛騨温泉郷の福地温泉で、昭和55年に日本最古の化石が発見されました。この化石は、オルドビス紀中期(4億8千万年前)のミジンコや3〜4億年前の蜂の巣サンゴ・四射サンゴ・ウミユリ・三葉虫などの貴重な海生物の化石がみられ、国の天然記念物に指定されています。
 次に石灰岩の鉱床は、糸魚川〜静岡構造線(フォッサマグナ)の西端に位置する新潟・富山両県に跨る青海石灰石鉱床。長野県諏訪富士見地区より下伊那南部に至る南アルプス石灰石鉱床。愛知県渥美半島北部より豊橋市から静岡県浜名湖北部にかけて、長楽・田原・白岩・栃窪・都田の鉱床。また、三重県の北部藤原・鈴鹿鈴峰鉱床及び紀伊半島和歌山市と伊勢市を結ぶ大宮・三重鉱床。滋賀・岐阜県に跨る伊吹地区には伊吹・近江・春日の各鉱床。
 そして、筆者居住の岐阜県では、揖斐郡大野町と谷汲村にまたがる岐阜鉱床、本巣郡根尾村と山県郡美山町に渡って舟伏山鉱床。そして、大垣市の北西赤坂町に位置する金生山を中心とする美濃赤坂鉱床。というように広い範囲に渡って分布しており、また、金属・非金属鉱山・亜鉛の鉱山も数多く点在しています。
 その中で、三井金属鉱業(株)のグループ会社である岐阜県吉城郡神岡町にある神岡鉱業(株)と、福井県大野郡和泉村の日本亜鉛鉱業(株)では鉱山跡地を利用してそれぞれ別な利用がなされており、以下ご紹介させて頂きます。

1.アドベンチャーランド中竜(日本亜鉛鉱業(株)採掘跡地)
“ 神秘とロマン!!冒険とスリル!!(鉱山見学・地底探検) ”
 住所 福井県大野郡和泉村上大納 (0779)78−2210

 中竜鉱山は、福井県南東端九頭川上流左岸の美濃越前山地の一角、谷間にひっそりといきずいています。当鉱山の歴史は古く、今から約750年前の寛元年間に発見されたといわれ、銀、鉛の採鉱を行ったと見られる旧抗が各所に存在しています。
 中竜鉱業所の中竜名は、昭和初期、日本亜鉛鉱業株式会社発足時の出資者である横浜の実業家、中村房次郎氏と鉱業権者、竜田哲太郎氏の創立者両氏の頭文字をとり名づけられました。
 鉱物として、閃亜鉛鉱、方鉛鉱、黄銅鉱、磁硫鉄鉱等を採掘されていましたが、昭和62年円高による金属価格の暴落でやむなく採掘休止。これまで採鉱した地下空間を一般に開放し、アドベンチャーランド中竜がオープンしました。
探検コースへは中竜マイン号(バス)で一気に地底の見学コースまでもぐります。
坑内の温度は1年中一定で18℃位だそうで、夏場だと絶好の避暑地空間となります。
坑内電車や採鉱堀場で活躍した大型機械類が展示されており、採掘時の雄大なスケールがしのばれます。



2.星のたよりの届く町、飛騨神岡町
“輝け、夢の結晶”〜 DREAMS of MINE 〜
 「スーパーカミオカンデ」(東京大学宇宙線研究所付属神岡宇宙素粒子研究所施設)
住所 岐阜県吉城郡神岡町東茂住 0578−5−2116 http://www-sk.icrr.u-tokyo.ac.jp/

 岐阜県の北端、飛騨山脈とその支脈に抱かれた町神岡町。この町は、遠く奈良時代から、明治・大正・昭和・平成へと亜鉛鉱山として栄え、数多くの人々が鉱山の奥底へと挑み続け、総延長1,000kmにも及ぶ無数の坑道や大きな空洞がいたるところにできている。平成13年6月末日で採掘を終え、現在は中国他からの海外亜鉛鉱石の精練が行なわれている。
 さまざまな可能性を秘めた神岡鉱山では、採鉱を終えた地下空間を利用して様々な視点から研究開発が進められている。町から北へ車で20分程の富山県境近く神岡茂住坑は、日本で最も硬い岩盤(飛騨片麻岩)で外界の影響をほとんど受けない為、数多
い研究の中の1つニュートリノの研究には最適。その茂住坑がある池ノ山(標高1,360m)の山頂から地下1,000mの場所で、1983年から素粒子の実験が始まり、カミオカンデ・スーパーカミオカンデによる観測調査など素粒子物理学についての大規模な研究が行われている。
昨年10月小柴昌俊東大名誉教授がノーベル物理学賞を受賞されて以来、神岡町はノーベル賞の町として一躍脚光を浴びるようになり、世界の「カミオカ」として注目されている。
 「スーパーカミオカンデ」の前身である「カミオカンデ」は、太陽・大気ニュートリノを観測し平成8年に観測を終えたのだが、この発見により小柴教授がノーベル物理学賞を受賞されたのである。現在は東北大学が「カムランド」という名称でこの施設を利用されており、水に替わって液体シンチレータを使って低エネルギーのニュートリノを、また、神岡は各原子力発
電所から約200km程度離れた場所に位置するため、この原発からのニュートリノを観測するために活躍している。
 次に、大型水チェレンコフ宇宙素粒子観測装置「スーパーカミオカンデ」は、5万トンの超純水を蓄えた直径39.3m、高さ41.4mの円柱形水タンクと、その壁に設置された浜松フォトニクス社製の光電増倍管と呼ばれる11,146本の光センサーなどから構成されている。宇宙からの光は星だけでなく、宇宙や太陽から地球へと降り注ぐ謎の素粒子ニュートリノの光をつかまえるという世界最先端の研究が連日この施設で行なわれている。
 今後は、更なるニュートリノ振動実験を行うため、250km離れた茨城県つくば市にある高エネルギー加速器研究機構から発生された人工ニュートリノを神岡で測定する実験が現在行なわれており、これからも世界中の科学者の注目を集め、神岡は地底から宇宙を探るニュートリノ天文学の発信基地となるであろう。
 残念だが一般の人はこの施設を見学できないが、町では国道471号沿いの「宙(スカイ)ドーム神岡」の一角にレプリカを設置して、スーパーカミオカンデ実験装置内の光電子増倍管の実物展示や、ニュートリノをどう感知するか、などのシミュレーション体験ができる設備が併設されているので、是非訪れてみてはどうですか。


3.飛騨大鍾乳洞
実物展示室           「スーパーカミオカンデ」本体・構造
住所 岐阜県大野郡丹生川村 掾@0577-79-2211

 飛騨大鍾乳洞は高山市の東部、平湯温泉との中間にあります。
入り口の美しい滝に迎えられて入ると、洞内はまるで別世界。約800mにも及ぶ見学コースが、太古の夢へと誘います。

皆さんご承知のとおり、鍾乳石は、石灰岩が雨水に溶け、長い年月の間に少しづつ堆積してでき上がります。つららのように垂れ下がるものを鍾乳石。タケノコのように下から伸びるものを石筍。鍾乳石と石筍がつながったものを石柱と呼びます。
当鍾乳洞で最も多く見られる学術的にもきわめて珍しいものがあります。ヘリクタイトと呼ばれ、鍾乳石が左右にねじれながら垂れ下がってできたものです。

 また、鍾乳洞からウミユリ、フズリナ、サンゴなどの化石が発見されており、ここの地層が2億5千年前、海の底であったことを示しています。
太古の眠りからさめたミステリアスゾーンとでもいうべきか、照明効果とあいまって、神秘感の漂う鍾乳洞でした。
(編集委員 清水一昭、岩田廣光 記)