■特集003 石にまつわる話「 中国編 その1 岡山 」
地球の鼓動が聞こえる
【岡山の鍾乳洞】

 新見市を一躍有名にしたのは、日本の選挙の歴史を変えるべく6月23日に行われた市長・市会議員選挙の電子投票でした。 事前のPR、体験投票など準備が行われていた為ほとんど問題もなくスムーズに行われ、投票時間も自書式に比べ速いような感じもした。
 私も経験なく一発勝負でしたが、銀行のATMの方が難しいとさえ感じる状況でした。   集計担当者2人、開票時間わずか25分で済ませることが出来ましたが、不在者投票が自書式だったためそちらに時間と人数がとられていました。
 この新見市を含む阿哲地区、また周辺には岡山の石灰地帯が点在している。
当然石灰産業も発達してきたが、地中に眠る鍾乳洞も次々と発見開発され、それぞれが観光の名所となっている。

1.井倉洞

 JR伯備線の井倉駅(新見駅より2つ岡山寄り)から徒歩約15分、石灰岩で出来たカルスト台地からの240mの絶壁と高梁川が織り成す井倉渓にある観光名所である。
 昭和33年発見され昭和34年から新見市が観光洞として開発した。入口は高さ2m幅2mと小さいが、長さ1200m、高低差90mとこの地方最大のスケールを持ち、交通の便も良く周辺にある鍾乳洞のシンボル的存在で県指定天然記念物となっている。
 洞内の鍾乳石と石筍の織り成す自然の造形美はまさに自然の不思議、偉大さに驚かされる。
「月ロケット」、「化粧まわし」、「登亀」、「瀬戸の海」、「くらげ岩」と数々の名前がつけられていますが、その一つ一つがまさにその姿でありそれを連想する世界に引き込まれる。
阿哲峡から井倉洞を望む
井倉洞銀すだれ
 なかでも50mの落差を誇る洞内滝は地軸の滝と呼ばれ、天の岩穴から落ちる滝、岩肌から染み出す水、そして岩間に吸い込まれて行く流れ、目の前にぽっかり開いた黒い穴はどこまでつながっているのか、そして足元の亀裂はどこまで深いのか、地球の鼓動が聞こえてくる有限の回廊です。 まさに、地球の無限を感じさせる場所です。
 その他に「ありさの滝」、「音の滝」と3つの洞内滝があるのも特徴で、顕著な二次生成物としてつらら石・流れ石・カーテン・石筍・石柱がある。
 カルスト台地のドリーネから染み込んだ1滴1滴の水が、数億年の命に隙間を作り鍾乳洞として現在に至った歴史をそのままの姿で見られる場所で、1滴の水の力を痛感する場所でもあろう。
2.満奇洞

 井倉洞から車で約20分、カルスト台地の上にできた洞窟である。
江戸時代末期、地元の猟師が狸を追っている時に発見されたと言われている古くから知られた鍾乳洞である。
 当時は地元の槙と言う地名からとって槙の穴と呼ばれていたが、昭和4年与謝野鉄幹.晶子夫妻が訪れたとき晶子が『奇に満ちた洞』と詠んだことから地名にちなんで満奇洞と言われるようになった。  入口には与謝野夫妻の歌碑が建てられている。

  おのづから 不思議を満たす 百の房  ならびて広き 山の洞かな    寛
  満奇の洞  千畳敷の蝋の火の あかりに見たる 顔を忘れじ      晶子
  まきの洞 ゆめに吾が見る世の如く 玉よりなれる 殿つくりかな    晶子
満奇洞 竜宮橋
満奇洞 唐獅子
 満奇洞は阿哲台では最も早く開発された鍾乳洞で、洞穴は平面に発達した迷路に富む閉塞・断層か型の吐出穴であり、総延長450m・最大幅25mの鍾乳洞である。最大のプールは「夢の宮殿」、「竜宮」と呼ばれ、無数のつらら石・カーテン・洞穴さんごが発達した見事な景観をもっている。プールの最大水深は約1mで、この水は近くで地下に吸い込まれそのため洞口付近は流水がなく、鍾乳石は乾燥し風化しつつある。
 鍾乳管・つらら石・畦石・カーテン・石筍・石柱が無数に存在し、鍾乳石の宝庫と呼んで差し支えない。
 雄大で繊細、鮮麗にして幻怪、水が地球に刻んだ造形の画廊である。全てを知り尽くすには人間の時間の短さを感じさせられる。
 ちなみに映画『八つ墓村』で映し出された鍾乳洞シーンは、この満奇洞でロケされたものである。
3.鍾乳穴(かなちあな)

 北房ICから6Km車で約10分の所にあり、県南からつながる吉備高原の北端に洞口を開き地下につながる白亜の殿堂といわれる鍾乳洞である。現在さらに開発中であるが、一般に開放されているのは300mまでである。
 古くから知られていたが観光地としては新しい。読み方は特別で「かなちあな」というが、入口から100m地下の自然の冷気は刻々と身に迫り1年中定温でまさに夏涼しく、冬暖かい天然の快適な場所である。
 洞内は「夢の宮殿」と呼ばれる大広間を始め、高さ3m直径5mの大石筒「洞内富士」、22階層からなる「五重の塔」と千変万化に富んでいる。
特に夢の宮殿は、この地方にない広さでまさに石灰石が作った鍾乳石の宮殿である。
かなちあな入口
22階層「五重の塔」
4.羅生門
 鍾乳洞にも、幼年期、壮年期、老年期、死後の姿と一生がある。井倉洞は壮年期、満奇洞は老年期、羅生門は死後の姿とされています。
 羅生門は、井倉洞の上に広がる標高400mカルスト大地のドリーネにできた石灰岩の巨大なアーチで、上部は天然橋となっていて通行も可能である。第1門から第4門までアーチはつながり、末端は羅生門第1洞と呼ばれる吸い込み穴となる。
 成因は、古い鍾乳洞が崩落し一部分が残存してアーチとなった、鍾乳洞のなれの果ての姿と呼ばれる。 夏に訪れるとモヤと冷気に寒ささえ感じ、まさに「羅生門」の名にふさわしい鬼気迫るものがある。
羅生門
【鍾乳洞めぐり】

【問い合わせ】
(1) 井倉洞   新見市商工観光課   0867−72−6136
(2) 満奇洞     〃
(3) 羅生門     〃
(4) 鍾乳穴   北房町役場振興室   0866−52−2111

(編集委員 吉尾 将夫記)